京都大原記念病院グループリハビリスタッフのあんなことこんなこと

あんなこと

橋本

家に帰る(あるいは根付く)

2012年6月04日(月)

今年もリハビリテーション部の求人資料が完成しました。一般の方には目にふれる事がないでしょうけど、裏表紙には「合言葉は、いえにかえろう」と書かれています。

 

33年も前になりますが、学校の球技大会の最中に骨折をしました。足が左脛の真ん中からあらぬ方向に折れ曲がりました。

すぐに救急車が来て、救急病院へ担ぎ込まれました。

骨折の整復(骨折端の修正)に1週間、プレート固定術後抜糸までに1週間、ギプス固定のまま4週間を経て退院しました。

 

いつも通りに学校へ出かけたつもりが、いつも通りではない骨折で帰宅まで6週間を要しました(帰宅時には膝から下にはギプスが巻かれていましたが)。

病院に担ぎ込まれた時、考えていたのは「早いところギプスを巻いてもらって家に帰る」それだけでした。当時骨折治療に対する知識がなかったとはいえ随分とお手軽に考えていたものです。まさか突然6週間も家に帰れなくなるとは想像もつかなかったのです。

 

6週間思うままに動けなかった事もあり、まだ10代の若さでも体力の低下は歴然とありましたが、それでも若さのおかげでリハビリをする事もなく家に帰れました。

 

京都大原記念病院も、ある日突然の脳卒中や骨折で、着の身着のまま意識も確かでない状態で病院に担ぎ込まれ、転院してきた患者さんで一杯です。

 

私は家に帰れましたが、若年者の単純な骨折と違うのは、在宅復帰率7割余りと言う数字が物語っています。単純な骨折であっても、ほんの軽い麻痺であっても、加齢に伴い元通りの生活どころか、家に帰れるかどうかさえ難しくなります。

当院の場合3割弱の方が家に帰れなくなります。帰れない理由はさまざまですが、帰れない場合のその後の選択肢はそれほど多くありません。

老人保健施設か、(養護、特別養護、軽費、有料)老人ホームか、グループホームか、高齢者専用集合住宅か。

 

患者さんやご家族にはそれぞれの事情があり、帰れない理由もさまざまで、家に帰れないことは仕方ない事かもしれません。

私は機会があるごとに、そういう家に帰れずに転院する患者さんが1日だけでも帰宅できるように算段できないか若いスタッフに提案します。介護が大変で家族の負担が大きくても、せめて1ヶ月、駄目でも3週間、2週間、1週間、いやたった1日だけでも帰れないか検討し提案して欲しいと思っています(ケアマネージャーによってはそんな短期間のケアプランの策定を面倒がるかもしれません)。

多分若いスタッフのほとんどはたった1日ぐらい家に帰したところでと考えているのかもしれません。それはそれで仕方ない事かもしれません。若いスタッフの多くは寮やアパートに一人住まいで、結婚するまでとか退職して帰省するまでの仮住まいと考えているでしょうから、患者さんのように長年その家に根付いた生活に戻れないと言う事が、どういうことか想像できなくても仕方ないのかもしれません。

 

10代の私でさえ骨折と言う重症でも、すぐに家に帰りたがったのです。何の心構えも準備もなかったから当然です。それは当院の患者さんも同じ事です。突然の病気や怪我で自宅から連れ出され、仕方ない理由があったにしろ以降死ぬまで自宅に一歩も踏み入れる事ができなかったとしたら。いや誰にしてもそうではないですか。いつも通り出かけたはいいけど、二度と再び家に帰れないとしたら。

 

何が何でも1日でも良いから家に帰せということではありません。そういう気持ちを持って、たった1日であっても在宅のケアプランを提案して欲しいと思っています。

京都大原記念病院が患者さんを家に帰すことができなければ、死ぬまで帰れない。そういう気持ちで臨んで欲しいものです。

 

次回私のブログは6/7です。

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