京都大原記念病院グループリハビリスタッフのあんなことこんなこと

あんなこと

橋本

主体は?

2016年11月17日(木)

ちょうど17年ほど前ですか、この時期にシンポジウムに駆り出されたことがあります。

 

当時も、今でも思い返すにシンポジストとしては大したこと全然喋れんかったなぁと言うのが正直な感想です。

 

そのシンポジウムの最後の質疑応答で、やたら喧嘩腰なおばさんが(どこの誰ともよくわかってるんですが)、「大原記念病院は患者を洗いざらい盗っていく云々(因みにここに書いてる通りに言われました)」

一瞬あっけにとられて、あまりの不穏な物言いに座長がすぐさま割って入って、反論する機会もなくシンポジウムは終わっちゃいました。

 

内の病院に限らず、いろんな場面で「(お客さんを、患者さんを)盗った、盗られた」と言う話を耳にしますが、これほど人を馬鹿にした言葉もないものです。「盗った」「盗られた」と言う言葉にはお客さんや患者さんの意志はまるでないものが如く、モノ扱いしている言葉だからです。

 

言うまでもないことですが、お客さんや患者さんは人間です。それぞれ一人一人に意志があり考えがあります。商品やサービスを変えると言うのはもともとの商品やサービスに不満があったり、より優れた商品やサービスに鞍替えしただけで、「盗った」のでもなければ「盗られた」のでもありません。

 

あえて言うなら

「逃げた」「逃げられた」でしょう。

 

「盗った」「盗られた」にはお客さんの意志はありませんが、「逃げた」「逃げられた」にはお客さんの意志があります。

 

最近2~3年目のスタッフと話していると、迷っているとよく聞きます。

何を迷うのかと言うと、患者さんの落ち着き先を「施設」にすべきなのか「自宅」にすべきなのか、どちらが妥当なのか、患者さんに問題は数あれど、一体どこから取り組むべきなのかとか。

 

インフォームド・コンセントと言う言葉があります。「説明した上での同意」というのが訳らしいのですが、医療関係者の中には勘違いしている人もいて、治療方針を決めて家族や患者さんに説明して同意を貰えばいいと考えているような話も聞きます。

 

本当は治療方針を決めるのは患者さんや家族と言うことを理解している人は意外と少ないんじゃないかなと思います。

 

医療の素人に方針なんか決められんじゃないかと言う方もいるでしょうけど、だからこそ病院には医師をはじめとして医療の専門家がいるのです。

 

医療者側は治療のオプション(選択肢)を提示して、それぞれのメリット、デメリットを示して、最終的に患者さんと家族でどの治療方針で行くのかを判断して貰う、というのが適切なインフォームド・コンセントと言えるでしょう。

 

意訳するなら「説明の上での選択」がいいような気がします。

 

時々目にする新聞や週刊誌での医療過誤の記事には患者さんや家族の側が「そんなデメリットは聞いてなかった」とか「そんな選択肢があるとは聞いてなかった」とか言うのが結構あるようです。そもそも説明がなかったってのも聞きますね、論外ですが。

 

多分誰かが

「あんたの治療方法はこれで行く。ええな」

そんな感じで言ってるんじゃないでしょうかね。

 

ちゃんとオプションとメリットデメリットを示せば、あとは患者さんや家族が選んでくれるんです。何も迷うことはないはずです(ちゃんと説明できるかどうか、理解していただけるかどうかが本来の肝です)。

 

次回私のブログは11/24です。

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